前回の記事では、CUSCO type-RS SpecFの機械式LSDを1.5WAYから2WAYへ変更し、リングギアを仮締めしたところで作業を中断した。ベンチバイスが手元になく、デフケースを固定できなかったためだ。
この記事では、バイス到着後に再開した作業の全工程を記録する。リングギアの本締めから、LSD本体のデフキャリア組み込み、液体ガスケット封入、オイルシール取り付けまで、作業完了までの手順をすべて公開する。
※ 前回作業(4/7)では、1号機から回収したCUSCO type-RS SpecFの分解・1.5WAY→2WAY変更・リングギア仮組みまでを完了させた。その記録は【機械式LSD WAY変更に挑戦|CUSCO type-RS SpecFの1.5WAY→2WAY化と分解整備記録】にまとめている。
※ 前回作業(4/23)では、KSROM ECUチューン・SHORAIバッテリー・MOMO FULL SPEED・BRIDE ZETA Ⅳを一気に装着し、2号機のコックピットを完成させた。その記録は【修復歴あり2号機にKSROM ECUチューンを投入|レブリミット8,000rpm達成+コックピット完成】にまとめている。
この記事でわかること
- ベンチバイスを使ったリングギアの本締め手順(120N・m)
- 機械式LSDをデフキャリアに組み込む際のバックラッシュ確認
- 液体ガスケットによるデフキャリア封入の実際
- オイルシールを専用工具なしで取り付ける方法(塩ビパイプ活用)
- ND5ロードスター デフキャリアの総重量(実測値:20.6kg)
Step 1:ベンチバイス BB-200 到着・設置
注文から数日でKIKAIYA ベンチバイス BB-200が届いた。また、梱包を開けると想像より重量感があり、作業台への固定も問題なく完了した。

なお、取扱説明書に一点気になる記載があった。「雨のかかる屋外環境での使用・設置は不可」——動作部(スクリュー・ガイドレール)に腐食が生じるためとのことだ。したがって、屋内ガレージや作業部屋に設置する前提の工具であることを確認した上で、室内に固定設置した。
具体的には、スペックは口幅200mm・口開き230mm・口深さ102mm・重量約40kgだ。デフケース(外径約100mm)の固定に必要な口深さ100mm以上という条件を、このクラスで唯一クリアする製品だ。
デフケース固定に必須のスペックを満たします:KIKAIYA ベンチバイス BB-200
👉 口幅200mm・口開き230mm・口深さ102mm。デフケース固定に必要な「口深さ100mm以上」という条件をクリアする最安モデル。送料無料。
⚠️ 屋外での使用・設置は不可です。屋内ガレージ・作業部屋への設置を前提に選択してください。
Step 2:リングギアボルトの本締め(120N・m)
バイスにデフケースを固定し、いよいよリングギアボルトの本締めを行う。なお、締め付けトルクは120N・mで、対角順に均等に締め付ける。
ボルトは計10本だ。まず全ボルトを60N・mで1周させ、次に120N・mで本締めする2ステップ手順で進めた。さらに、締め付け後はボルトの頭に緩みが出ていないことを目視で確認した。

Step 3:機械式LSDをデフキャリアに組み込む・バックラッシュ確認
続いて、リングギアの本締めが完了したLSD本体を、デフキャリアのハウジングに戻す。サイドベアリングのプリロードを確認しながら、慎重に組み込んだ。
この段階でバックラッシュ(リングギアとピニオンギアの噛み合いのガタ)を確認する必要がある。厳密にはダイヤルゲージを使って数値を測定するのが正しい手順だ。今回は手でリングギアを揺らしながら感覚でバックラッシュが大きすぎないことを確認した。ただし、元々正常に機能していたユニットをそのまま戻す作業であるため、今回はこの方法を選択した。

なお、正確な手順が気になる方のために補足しておくと、ND5ロードスターのリアデフのバックラッシュ規定値はサービスマニュアルで0.08〜0.13mm程度とされている。正確な数値は必ずサービスマニュアルを確認してほしい。
Step 4:デフキャリア封入前の液体ガスケット塗布
LSD本体をデフキャリアに収めたら、カバーを取り付ける前に液体ガスケットを塗布する。

塗布のポイントは3点だ。まず、合わせ面全周に均一な細さで塗布すること(はみ出しすぎない)。次に、ボルト穴の内側にはみ込まないよう注意すること。さらに、塗布後は速やかに組み付けること(硬化が始まる前に締め付ける)。
つまり、塗布量は「少し足りないかも」と感じるくらいが適量だ。
Step 5:デフカバーの締め付けトルク確認・本締め
デフカバーのボルト締め付けトルクをサービスマニュアルで確認してから本締めを行う。規定トルク内でトルクレンチを使用し、対角順に均等に締め付けた。

液体ガスケットが均等につぶれるよう、一度に強く締めず2ステップに分けて締め付けるのが基本だ。締め付け後、カバー外周からガスケットのはみ出しが均一であることを目視確認し、組み付け完了とした。
また、封入するLSDオイルはもちろんCUSCO純正のGL5/80W-90を使用する予定だ。なぜなら、定期交換によるユニット状態の維持については、前回の分解確認で実証済みだからだ。
👉 分解確認で内部の良好な状態を確認できた。GL5/80W-90規格のLSD専用オイル。封入量はND5RCのサービスマニュアルに従ってください。ミッションオイルとの併用も可能です。
Step 6:オイルシールの取り付け(塩ビパイプ活用)
最後にオイルシールを取り付ける。本来、オイルシールの圧入には専用の圧入ツールを使うのが正攻法だ。しかし今回は、コーナンでちょうどいいサイズの塩ビパイプを購入して代用した。

塩ビパイプをオイルシールの外径に当てて、プラスチックハンマーで均等に叩き込む方法だ。ただし、コツは「一点集中で叩かないこと」。シールが傾いて入ると後からオイル漏れの原因になる。外周を均等に少しずつ押し込むように進めると、まっすぐ圧入できる。
塩ビパイプのコストはホームセンター(コーナン)で数十円だ。したがって、専用工具を買うより圧倒的にコストを抑えられる上、今回のサイズにはぴったりだった。なお、ホームセンターに行く前に、オイルシールの外径を事前に測っておくことを忘れずに。
完成・総重量確認・保管
総重量20.6kg
すべての組み付けが完了し、デフキャリアアッセンブリの総重量を計測した。結果として、実測値は20.6kgだ。

ND5ロードスターのデフキャリアはオールアルミ製(通常の市販車両はスチール製が多い)のため、同クラスのFR車と比較してかなり軽量な設計だ。それでも20kgを超える重量があることを考えると、車両への脱着作業には二人での作業か、ミッションジャッキの使用を強く推奨する。
2号機が来るまで保管
現時点では2号機(新車両)の納車待ちのため、完成したデフキャリアは梱包して保管する。納車は4月18日だ。

デフキャリア換装後の実走インプレッションは、組み付けと慣らし走行が完了してから別記事で公開する予定だ。2WAYに変更した効果、トレイルブレーキング時のリアの挙動変化に注目してほしい。
まとめ
今回の作業で、CUSCO type-RS SpecFの機械式LSDを1.5WAYから2WAYへ変更した一連の作業がすべて完了した。作業を通じて実感したポイントは3点だ。
まず、ベンチバイスは「あれば便利」ではなく「ないと作業できない」工具だということ。リングギアの120N・m本締めは、デフケースがしっかり固定されていなければ絶対に行えない。今回BB-200を選んだ理由は口深さ100mm以上という条件のためだが、この条件が作業の可否を決める分岐点になった。
次に、液体ガスケットの塗布量と速度感。少なめ・均一・速やかが鉄則だ。
そして、塩ビパイプによるオイルシール圧入が実用的に機能するということ。専用工具がなくても、サイズが合う塩ビパイプがあればSST(専用工具)がなくとも十分対応できる。
2号機納車後、デフキャリアを組み付けて実走テストを行う。2WAY化の効果については、コーナリング時の挙動変化とともに報告する。
この記事で紹介したパーツ一覧
KIKAIYA ベンチバイス200mm(BB-200)
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⚠️ 屋外設置不可。屋内ガレージ・作業部屋への設置前提です。
CUSCO LSDオイル 20L(GL5/80W-90)
👉 デフキャリア封入に使用したCUSCO純正LSDオイル。定期交換がユニット長寿命の直接の要因であることを分解で実証済み。ミッションオイルとの併用も可能です。
CUSCO type-RS SpecF(LSD 429 LT15)ND5RC用
👉 1.5WAY・2WAY両対応設計。クロスシャフトの移設だけでWAY変更が完結する機械式LSD。今回の作業で実際に使用したユニット。
⚠️ 装着にはデフキャリア分解・リングギア本締め(120N・m)が必要です。ベンチバイスを事前に準備してください。
次に読んでほしい記事
🔧 前回の記事(分解・WAY変更編) →【機械式LSD WAY変更に挑戦|CUSCO type-RS SpecFの1.5WAY→2WAY化と分解整備記録】
🔴 CUSCO機械式LSDの基本はこちら →【ND5ロードスターに機械式LSDは必要?CUSCO装着レビュー|メリット・デメリット・1way/1.5way/2wayの選び方】
🏎️ 全損からの復旧全記録 →【ND5ロードスター 全損からの再起|事故・保険・購入まで19日間の全記録】


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